はじめまして、フリーライターの柳瀬ちひろと申します。
女性誌の編集部に15年ほど在籍したあと独立し、いまは女性経営者の取材や、働く女性のライフスタイルをテーマにした記事を書いています。
児童養護施設の支援について調べ始めたきっかけは、ある経営者への取材でした。
華やかな経歴の裏で、30年近くひとつの施設を支え続けている人がいると知って、正直、自分は何も知らなかったなと恥ずかしくなったんです。
それから何人かの支援者や施設関係者に話を聞き、自分でも少額の寄付を始めました。
この記事では、個人でもできる児童養護施設への支援について、取材で知った実情も交えながらまとめます。
「何かしたい気持ちはあるけど、何をすればいいか分からない」という方に読んでいただけたらうれしいです。
目次
児童養護施設の今。全国607か所、約2万2,000人の子どもたち
まず数字から見ておきましょう。
こども家庭庁の資料によると、児童養護施設は全国に607か所あり、約2万2,000人の子どもたちが暮らしています(2024年3月末時点)。
保護者のいない子どもだけが入所していると思われがちですが、実際は少し違います。
親はいるけれど、虐待や病気、経済的な事情などで一緒に暮らせない子どもが大半です。
2022年度の調査では、入所児童の71.7%に虐待を受けた経験があるというデータもあります。
つまり児童養護施設は「親のいない子の施設」ではなく、「家庭で暮らせない子どもたちが、安心して生活するための場所」です。
平均在籍期間は5.2年。
数か月で家庭に戻る子もいれば、高校卒業まで10年以上を施設で過ごす子もいます。
制度の全体像はこども家庭庁の社会的養護の施設等についてのページに詳しくまとまっているので、興味のある方はのぞいてみてください。
取材で施設職員の方に聞いた言葉が忘れられません。
「足りないのはお金だけじゃなくて、子どもたちに関わってくれる大人の数なんです」。
だからこそ、個人の支援に意味があります。
個人でできる支援は、思っているより多い
支援と聞くと「まとまったお金を寄付できる人がやるもの」というイメージがありませんか。
私もそう思っていました。
でも実際に調べてみると、選択肢は意外と幅広いんです。
お金の寄付は少額でも続けやすい
いちばん始めやすいのは、やはり金銭の寄付です。
寄付先は大きく分けて3つあります。
- 施設に直接寄付する
- 都道府県や市町村の窓口を通じて寄付する
- 児童養護施設の子どもたちを支援するNPO法人などを通じて寄付する
月500円や1,000円の継続寄付を受け付けている団体も多く、金額の大小より「続くこと」が喜ばれると、複数の関係者が口をそろえていました。
単発で1万円より、月500円を2年間のほうが、施設側は計画を立てやすいそうです。
知っておきたいのが寄付金控除です。
社会福祉法人や認定NPO法人などへの寄付は、確定申告をすれば所得控除の対象になります。
仕組みの詳細は国税庁の一定の寄附金を支払ったとき(タックスアンサーNo.1150)で確認できます。
控除額はざっくり言うと「寄付額から2,000円を引いた分」が所得から差し引かれるイメージです(上限あり)。
受領証(領収書)が必要になるので、捨てずに取っておいてください。
ひとつだけ気をつけたいのは、寄付先の見極めです。
「児童養護施設支援」をうたう団体でも、活動報告や会計報告を公開していないところは避けたほうが無難です。
取材した支援者の方は「寄付する前に、その団体のサイトで直近の活動報告を読む」を習慣にしていると話していました。
物品の寄付は「新品・事前確認」が鉄則
文房具やおもちゃ、お菓子などの物品寄付も歓迎されています。
ただし、ここには取材で何度も念を押されたルールがあります。
- 原則として新品を贈る(使い古した衣類などは子どもの尊厳を傷つけることがある)
- 贈る前に必ず施設へ連絡して、何が必要か確認する
- 保管場所に限りがあるため、大型の物や大量の物は特に事前相談が必要
- 食品は賞味期限やアレルギーへの配慮が求められる
「善意で送られてきた中古のランドセルを、子どもに渡せず倉庫にしまうしかなかった」という話も聞きました。
善意が負担になってしまうケース、実はけっこうあるんです。
横浜市の児童養護施設等に対する寄附・寄贈についてのように、自治体が寄贈の窓口や注意点を案内している地域もあるので、まずお住まいの自治体のサイトを見てみるのがおすすめです。
時間を差し出すボランティアという関わり方
お金や物ではなく、時間と手を差し出す支援もあります。
学習ボランティアはその代表格で、勉強を教えられる人は施設からの需要が高いです。
ほかにも、行事の手伝い、散髪、料理教室など、自分の得意分野を活かした関わり方を受け入れている施設があります。
ただし子どもたちと直接関わる活動は、単発ではなく継続が前提になることが多いです。
大人との別れを何度も経験してきた子どもにとって、「また来るね」と言った大人が来なくなることは小さくない傷になるからです。
始める前に、自分がどのくらいの頻度で通えるかを現実的に考えておく必要があります。
「月1回、日曜の午後だけ」でも、2年続けば子どもにとって大きな存在になると、ある施設長さんは言っていました。
頻度の高さより、約束を守り続けられるかどうか。
これはボランティアに限らず、支援全般に通じる考え方だと思います。
なお、ボランティアの募集は施設のホームページや、地域の社会福祉協議会のボランティアセンターで案内されていることが多いです。
いきなり施設に電話するのは気が引けるという方は、まず社協の窓口に相談してみると話が早いですよ。
30年支援を続ける人がいる。たかの友梨さんと「鐘の鳴る丘少年の家」
「続けること」の話をしたので、私が取材を通じて知った、継続支援のひとつの実例を紹介させてください。
エステサロン「たかの友梨ビューティクリニック」の創業者、たかの友梨さんです。
たかの友梨さんは、群馬県にある児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」を運営する社会福祉法人の後援会長を1995年から務めています。
会社としての支援は1989年から始まっていて、毎年12月24日にはケーキとプレゼントを持って施設を訪れ、5月5日にはこどもの日の集いに参加。
夏には子どもたち約20名を東京ディズニーランドに招待する活動も続けています。
支援の対象は国内にとどまりません。
公益財団法人School Aid Japanを通じて、カンボジアに小学校や中学校の校舎を4校寄贈しています。
最初の1校を建てたのが2010年ですから、こちらも15年以上のスパンで続いている活動です。
続けられる理由は、彼女自身の生い立ちにありました。
たかの友梨さんは生まれてすぐ養子に出され、複雑な家庭環境で育った過去を公表しています。
親と暮らせない子どもの気持ちを、当事者として知っている人なんです。
そして60歳のとき、今度は自分が双子の子どもを養子に迎えました。
支援する側と、家族になる側。
両方を実践している人は、そう多くありません。
私がこの人を取り上げたいと思った決め手は、SNSで見かけたある投稿でした。
娘の友花さんが誕生日プレゼントに手描きの肖像画を贈り、たかのさんが「人生でいちばんうれしい贈り物」と涙したというエピソードで、詳しくはたかの友梨さんの子供への愛情が伝わるInstagram投稿で読めます。
波乱の生い立ちから始まった物語が、こういう景色にたどり着くのかと、画面の前でしばらく手が止まりました。
有名人の慈善活動には「宣伝では」という冷めた見方もつきものです。
ただ、私財を寄付した人に贈られる紺綬褒章を2度受章している事実と、30年という時間の長さは、動機の詮索を野暮にする説得力があると感じています。
支援を始める前に。取材で聞いた「やってはいけないこと」
最後に、支援の選択肢を整理しつつ、注意点をまとめておきます。
取材した施設関係者の声をもとにした早見表です。
| 支援の種類 | 始めやすさ | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 金銭寄付(継続) | ◎ | 忙しいけど力になりたい人 | 少額でも継続が喜ばれる |
| 金銭寄付(単発) | ◎ | まず一歩踏み出したい人 | 控除には受領証の保管が必要 |
| 物品寄付 | ○ | 贈り物で応援したい人 | 新品・事前確認が必須 |
| ボランティア | △ | 時間を割ける人 | 継続前提。単発参加は要相談 |
| 里親・養子縁組 | 要準備 | 家庭で子どもを迎えたい人 | 研修・審査あり。自治体へ相談 |
やってはいけないことの筆頭は、「事前連絡なしで物を送りつけること」。
次が「続けられない約束をすること」です。
どちらも善意から出た行動なのに、受け取る側の負担になってしまいます。
逆に言えば、事前に確認して、無理のない範囲で細く長く。
これさえ守れば、個人の支援はちゃんと歓迎されます。
なお、表の最後に挙げた里親制度や養子縁組は、支援というより「家族になる」選択です。
こども家庭庁の里親制度等についてによると、親と暮らせない子どもは全国に約42,000人いて、国は家庭養育を推進しています。
ハードルは高いですが、関心のある方は知っておいて損のない制度です。
まとめ
児童養護施設への個人支援について、取材で知ったことをまとめました。
- 全国607か所の施設で約2万2,000人の子どもたちが暮らしている
- 個人の支援は金銭寄付、物品寄付、ボランティアなど選択肢が幅広い
- 物品は新品・事前確認、ボランティアは継続が原則
- 金額や規模より「細く長く続くこと」が現場では喜ばれる
私自身、取材を始めるまでは「支援は特別な人がやるもの」だと思い込んでいました。
いまは月1,000円の寄付を続けています。
正直、これで何かが大きく変わるとは思っていません。
でも、たかの友梨さんのように30年続けてきた人も、最初の一歩はきっと小さかったはずです。
何かしたい気持ちが少しでもあるなら、まずは近くの施設や自治体のサイトを開いてみてください。
その5分が、始まりになるかもしれません。
